読者遠灯

のぐちの記録日記です。

変革を望む者と望まない者『自由の国アメリカ 闘いと変革の150年』

Netflixで『自由の国アメリカ 闘いと変革の150年(原題:Amend: The Fight for America)』というドキュメンタリー番組を観た。

原題にあるamendとは"修正する"という意味の単語で、これはこの番組が主な題材として扱っている憲法修正第14条のことを指していると思われる。

憲法修正第14条というのはざっくりと言うと「アメリカで生まれた人、アメリカに帰化した人はアメリカの市民です。これらの人の自由や平等を脅かしてはいけないし、資産を奪ったりしてもいけません」というような憲法らしい。憲法なので州の法律等もこれに従わなければならない。

この憲法修正第14条は南北戦争で黒人奴隷が解放された際彼らの自由とアメリカ人としての権利を保障するために作られた法律。

この憲法が定められるところがこのドキュメンタリーのスタートなのだが、このような憲法が出来てなお平等に扱われていない人々がたくさん居た(2021年現在もいる)。アメリカに住む黒人、女性、同性愛者、移民等アメリカにおいて平等に扱われていなかった人々がこの憲法修正第14条に書かれていることを信じ、この法律の適用範囲を広げていくことで自分たちが平等に扱われることを目指す。という彼らの軌跡が語られるのがこの番組である。

南北戦争以降のアメリカでどのようにそれぞれのコミュニティが権利を獲得していったかがわかりやすく、また活動家や研究者のコメントとは別に過去の活動家や政治家の発言を代わりに読みあげる役割で豪華な俳優が何人も出演するのでとても見応えがある。

自分で知っている範囲の俳優を書くとメインの語り手であるウィル・スミスの他、マハーシャラ・アリサミュエル・L・ジャクソン、『オレンジ・イズ・ニューブラック』のラヴァーン・コックス、『マスター・オブ・ゼロ』のリナ・ウェイス。アフリカ系以外の俳優も出演しており、ペドロ・パスカルや『ワンダヴィジョン』のランドール・パーク、ジョセフ・ゴードン=レヴィット。

映画好きな人だったら上記の俳優以外にも「おおっ!」となる人が多そう。

特に元奴隷であり奴隷解放の活動家であったフレデリック・ダグラスの言葉を読み上げるマハーシャラ・アリの表情や声の存在感がとても印象的。

 

シーズン全体で150年前から段々と現代に近づきつつ、どのコミュニティがどの段階で権利を獲得するに至ったかがタイムラインで整理されながら進むのでアメリカ現代史を見ていくと言うつもりで見ても良さそうだし、わかりやすかった。

「権利が与えられるのを待つ必要はない。自ら要求して良いんだ」

という言葉がこの番組を要約する上で適切だとおもう。

現状を変えようとする人々に心を動かされるのと同時に権利をすでに所持しておりその不平等な構造を変えようとしない人らへも関心が向く。

翻って自分自身が置かれている状況ってどうなんだろうと考え見ると、社会への不満はあることにはあるが、大きな苦労をせず生活出来ていることを考えれば、この番組で言う白人男性の立場に近いだろうなと思った。

先日職場の帰り、同僚の女の人に「電車で寝るってすごく気持ちいいですよね」と言ったら「1人の時は怖いから寝ない」と言ってて、自分が自覚していないまま所持してる特権て幾らでもあるんだ…と思いちょっと気まずかった。